数年前から「そのままの私」「ありのままの私」「私らしく」という言葉をよく聞くようになりました。
働くと言う場面に限定すると「私らしく働く」「私らしさを大切にする」みたいな感じでしょうか。自分らしさを大切にして働くことは、気持ちよく働くためにはとても大切なことだと思います。
でも、この言葉が一人歩きしてしまい結果として、
「自分らしく働きたいだけなのに周りに理解してもらえない」
「私のことを理解してくれない上司(職場)はダメだ」
と周りの理解のなさに憤慨したり、「どうせ私には無理」と諦めてしまったりしている人が多いように感じます。
誤解を恐れずに言うと、働く場において「そのままのワタシ」が通用すること、受け入れられることは、ほとんどないんじゃないかな。
なぜなら、それぞれ価値観、大切にしていることが違うから。
色々な価値観がある中で、「これが”そのままのワタシなの”受け入れて!」と皆が言い始めたら収集がつかなくなるはず。
かといって、自分を押し殺して周りに合わせることが求められるのか?と言われれば、それも違うと思っています。
ビジネスの場においては、「100%そのままのワタシ」でいようとすることでも「とことん周りに合わせ用とする」ことでもなく、「そのままのワタシ」をチューニングしていくことが大切なんじゃないかな。
「そのままのワタシ」を活かすことの大切さ
上で書いてきたことと矛盾するようだけれど、ビジネスの場においても「ワタシらしさ」って、すごく大事だし、自分にしかない武器だと思うのです。
私は組織開発のコンサルタントや研修講師として、会議やワークショップのファシリテーションをすることが多いけれど、その時にファシリテーターの大先輩からよく言われるのが
「自分のままで、自分の強みを活かしてファシリテーションをすること。他の誰かにはなれない」
ということ。
完璧主義のところがあるので、「ちゃんとファシリテーションしなきゃ」と思いがちなのですが、自分の強みや自分らしさを出した方が、その場がスムーズに進んだり、周りが助けてくれたりするんですよね。
これは普段の仕事でも同じだなと。
私が一緒に働く仲間を見て、「彼女(彼)は、こんなところが素敵なところだな。ここをもっと出してみたら、いい仕事ができそうなのにな」と感じることもあります。
それを引っ込めている人を見ると勿体無いなぁと思うのです。
「そのままのワタシ」だけで突き進むと周りと衝突する
一方で、「そのままのワタシ」だけを押し付けてくる人に対しては、「もうちょっと周りを見てよ」と感じることが。
クライアントさんや仕事仲間、友人と話をしていても「◯◯さんのこういうところはいいんだけど、それを押し付けられると…」という話がよく出てきます。
それが受け入れられないと途端に被害者モードになったり、機嫌が悪くなったりするからウンザリ…というところまでセットの事が多いかも。
「そのままのワタシ」を上手に活かして働けている人と、周りからウンザリされて結局働きにくくなっている人と、どこが違うのかな?と考えると、うまくいかない人って暴走している気がします。
暴走っていうとアクセル踏みまくって、自分ひとりで、どんどん突っ走ってしまう人をイメージしがちですが、逆のパターンもあると思っていて。
何を聞いても黙っているとか、自分の意見を言わないとかというのも、ある意味の暴走だと私は思います。
「これが私だから!」の暴走が衝突の原因であり、私らしく働けないことの大きな要因なのではないかな。
「そのままのワタシ」をビジネスの場で活かすには?
出し過ぎても出さなすぎてもうまくいかない「そのままのワタシ」
最初に「そのままのワタシをチューニングする」って書いたけれど、ビジネスの場で活かすには、まさにこれがポイントなんじゃないかな。
相手への気配りはとても大事だと思っていて、「相手に対して自分がどんなことができるのか>そのままのワタシ」という気持ちは持っていても良いのでは?と。
大先輩のファシリテータからこんなフィードバックを受けたことがあって。
「”うまくやらなくちゃ”、”この場をなんとかしなくちゃ”と自分自身にばかり意識のチャンネルが大きくなったら、そのボリュームを少しだけ下げて”相手に対して自分は何ができるだろうか?”と相手に意識を向けて、そのチャンネルのボリュームを大きくしてみるといいよ」
あぁ、その通りだなーって。
ついつい自分を受け入れてもらうこと、自分が評価されること(失敗しないこと)に目が向きがちで、そうすると「そのままのワタシ」が暴走してしまうんだなと思うのです。
「そのままのワタシ」が暴走しそうになった時に、少しボリュームを下げてみる。
音楽を聴くときも同じだと思うのです。あまりにも爆音だと耳が痛くなるし、周りにも迷惑をかけてしまいますよね。逆にボリュームを絞りすぎれば音楽を楽しめなくなる。
これと一緒で、「そのままのワタシ」を出しすぎても絞りすぎても、ビジネスの場ではうまくいかないのではないかなー。
私らしさを活かしつつ、自分らしく働くためにも、「そのままのワタシ」をチューニングして使うのが大切なことだなと思います。