今日は、「優秀な社員に共通する退職間際の5つのサイン」について解説します。

「辞めます」と言われてからでは遅い。「びっくり退職」は組織の損失

あなたは優秀な社員から突然、「会社を辞めたいんです」と言われて困ったことはありませんか?
以前から相談をされていたり、ご家族の事情や体調不良など、「それなら仕方ないな…」と思える理由なら残念だなとは思いつつ納得できますが、突然「辞めます」と言われたら、「えっ?なんで?急に言われても困るよ…」とびっくりしますよね。

私も自分自身が突然「辞める」と言って引き留められた経験も、逆に人事責任者として「辞める」と言った社員を必死に引き留めた経験もあります。

「でも、お給料をあげたり、誠意を尽くして引き止めれば大丈夫でしょ?」と思っているなら、その考えは今すぐ捨ててください。

優秀な社員ほど「辞める」と言った時には、すでに次の仕事の目処が立っていることがほとんど。
しかも「辞めると言ってから誠意を尽くすぐらいなら、最初からそうしてよ」と冷めた目で見られる事が圧倒的に多いです。

万が一、引き留めに成功したとしても、辞めようとした社員が同じように貢献するとは限りません。 そればかりか1年も経つころには、また「辞めます」と言ってくるかもしれません。
それに残っている社員から見ても、優秀な社員から辞めていってしまう組織なんて、自分も早く辞めたいと退職の連鎖を起こす一方だし、「辞めるって言えば、いうことを聞いてもらえる」という噂が流れれば組織のルールすら怪しくなります。

当事者間の秘密にしたところで、こういうことはどこからかすぐ漏れて、あっという間に全社に広がっていくんですよね。 ですから、「辞める」と言われてから何とかするのではなく、「辞める」と言われないように対策を取ることが大事なのです。

組織が成長していくためは優秀な社員の「びっくり退職」を防ぐことは必須

とはいえ、毎日の業務に追われていると、なかなか一人ひとりに意識を向けるのは難しいですよね。

特に優秀な社員は、放っておいても出来る人、やってくれる人が多いから、ついあと回しになってしまうのも分かります。 私も自分が人事をやっていた時、いわゆる「問題社員」のフォローや対応に時間を取られて、エース社員への対応は二の次になったことがあります。

「この人は何も言わなくても大丈夫」「私の後を任せられる」と思っていたら、あるとき突然「辞めます」と言われて、思わず「えっ?冗談だよね?ほんと?いつ?なんで?」と質問責めにしたことも。
1対1で何度か話をしましたが、結局辞めるという意思を変えることはできなかったという苦い思い出があります。

あの時、この予兆を知っていたらもう少し早い段階で声をかけられて退職を防げたかもしれない。今でもそう思うことがあります。 あなたはぜひ、優秀な社員の退職を防いでくださいね。

きっかけが分かれば、早めに声をかけて辞める原因を潰すこともできますよね。
また、そもそも、そのきっかけが起こらないように会社として対策を立てることもできます。 優秀な社員が退職しない会社は、当然売り上げも利益も伸びていきますし、世代交代もスムーズに行きます。

また「びっくり退職」がなくなる分、予定外の採用にコストや時間をかける必要もなくなります。 さらに「びっくり退職」がなくなる対策が立てられているということは、今いる他の社員にとっても、仕事のしやすい環境になっているはずです。
もしも「これは思い当たるな」という事があれば、今すぐ対策を取ってください。

また「あー、うちの会社にめちゃくちゃ当てはまるなぁ」と思った社員の方は、ぜひ上司や人事責任者に見てもらい、対策を取ってもらってください。 もし何もしない会社であれば、これからも人は辞め続けますし、あなた自身も転職を考えた方が良いかもしれません。

優秀な社員に共通する退職間際の5つのサイン

退職間際のサインの具体的な内容をお伝えする前に、よくある勘違いをお伝えします。

それは「辞めます」と言われてから引き止めれば、辞めずにいてくれると思うことです。

優秀な社員の引き留めに成功する確率は1%あるかないかです。
私も12年間の人事時代に「辞める」と言った社員を引き留めた経験が何度もありますが、そのまま続けてくれた社員は1人しかいません。

私自身も何度も転職をしていますが、引き留められて残った経験は1回だけです。 それぐらい確率が低いのです。 このサインが出た時にはイエローカードが1枚出ていると思って、すぐに対策してください。 そして、あちこちからイエローカードが出ないように仕組みを考えることも必要です。

1.噛みついてこなくなったら危険

「そういえば、前は◯◯は、おかしいじゃないですかってよく言ってきたけど、最近何も言われないな」
「そういえば、ちょっとした愚痴も聞かなくなったな」

もし、これを「あいつも大人になったな」とか「やっと上に立つ人の苦労がわかるようになったか」なんて思っていたら危ないですよ。

これは大人になったからでも、上司の苦労がわかるようになったからでもなく、単に「もう労力を割くのも面倒くさい」と諦めて何も言わないだけです。

2.「それでいいと思います」「いいんじゃないですか?」と言われたら危険

1つ目の諦めと似ていますが、退職しようとしている会社なので、迂闊な事を言ってタスクを増やされたり責任を負わされたりするのは全力で避けたいものです。

それに退職する会社がどうなろうと自分には関係ないと思えば、積極的に意見を言う必要もないですよね。

3.有休の取り方が変わったら危険

これは私も経験があるのですが、退職を決めた途端に有休を取ることに抵抗がなくなりました。

有給を使わず辞めるなんて勿体無い。どうせなら、使えるだけ使って辞めようと言う意識が働く上に、転職活動などで有給を使う機会も増えます

だから普段は「たまには休めよ」と言われるほど有給を取らない社員が有給を取るようになったり、とっても半日や1日だった社員が長期で有給を取るようになったら危険信号です。

4.仕事の仕方が変わったら危険

「これまでは結構残業が多かったのに急に残業しなくなったなぁ」
「今まで”自分がやる”と言っていた仕事を急に後輩に任せるようになったな」

今までとは明らかに働き方が変わったら、要注意。 自分がいなくなることを前提に仕事をしている可能性が高いです。

急にマニュアルを作り始めたり、サーバーのフォルダの整理をし始めたりした時も辞める前兆かもしれません。

5.成果にこだわらなくなったら危険

優秀な社員は仕事のプロセスはもちろん、成果にもこだわる人が多いです。

もちろん、あからさまに手を抜いて適当に仕事をするという人は少ないですが、「絶対に成果を出すんだ」と言う前向きな気持ちはなくなります。

目標は達成しているから一見わかりにくいかもしれませんが、実は達成率が下がっていたり、「今までだったら、ここまでやってくれたのになぁ」と違和感を覚えることが増えていくはずです。

まとめ

いかがでしょうか 優秀な社員に共通する退職間際の5つのサイン

  1. 噛みついてこなくなったら危険
  2. 「それでいいと思います」「いいんじゃないですか?」と言われたら危険
  3. 有休の取り方が変わったら危険
  4. 仕事の仕方が変わったら危険
  5. 成果にこだわらなくなったら危険

ぜひ、優秀な社員からこんなサインが出ていないか観察してください。 そしてもしサインが出ていたら、「辞めます」と言われる前に、できるところから原因を取り除いてください。

「辞める」と決めた相手を説得するのは、とても大変なことです。 だからこそ退職間際のサインを受け取って、早めに原因を取り除く事が大切だし、サインが出ないような根本的な対策を取ることが必要です。

人気バスケット漫画の有名なセリフの中に「諦めたらそこで試合終了です」と言うものがありますが、退職間際に出すサインは、まさに試合終了の笛を吹く直前なのです。 ぜひ、組織全体でできるところから対応し、試合終了の笛が吹かれないようにしてくださいね。