話題の映画、『ラストマイル』を観てきました。
詳細は後で書くことにして、感想を一言で言うならば「エンタメとして最高に面白い。でも、自分の在り方はそれでいいの?と問いかけられているような重い映画」でした。
元々、TBSで数年前に放送された『アンナチュラル』という法医学ミステリーが好きで、そのメンバーが数年ぶりに映画で集結するということで、公開前からとても楽しみに。
謎解き、ミステリーとしてのエンタメ部分は、最後の最後までワクワク楽しめました。ここはネタバレしちゃダメなところよね(笑)
昔ながらの「刑事の勘と足」ではなく、デジタルを駆使して犯人に辿り着くのも今どき。(2時間ドラマ好きとしては、渡瀬恒彦さんや内藤剛志さん、船越英一郎さんが刑事の勘や経験から真相に辿り着くのも好物ですが)だなと。
その一方で私が重たいと感じたのは、この映画には今の物流、運送業界を取り巻く「2024年問題」とか、ただひたすら業務効率を追い求め、売上を上げることだけに価値を見出す数字至上主義の弊害が描かれているから。
フィクションではありつつ、近しい会社をイメージしやすいことも、どこか遠くの物語ではなく、ごく身近な出来事として捉えやすい要因なんだと思います。
映画の舞台となる、世界最大の通販センターの配送システムを見た時、20世紀初頭にテイラーが主張した「科学的管理法」を思い出しました
科学的管理法とは、標準作業時間を測定し、出来高によって賃金支払いを変えるなど、管理についての客観的な基準を作って、最低限のコストで最大限に生産性をあげようとする管理法のことで、一定の成果を上げる反面、人を道具として扱っているという批判もある管理法です。
この通販センターの仕組みが、まさに科学的管理法だなぁと。
さらに、会社の売上を守るために運送会社の配送料を極限まで買い叩く。配送の責任は運送会社。
運送会社も買い叩かれた運送料から利益を確保するために、さらに下請けの配送業者を安く買い叩く。
ラストマイルとは「品物をお客様に届けるところを担う仕事」を指すようですが、「昔はそこに誇りを持って仕事をしていた。でも今は…」と言うセリフが印象的でした。
大元の通販センターが悪い、大手運送会社が悪いと叩くのは簡単。
でもそれを作っているのは誰?と考えると自分自身に返ってくる。
「できるだけ早く、安く」を求め続けた結果の今だよなと。
そして事件の真相がわかってなお、「この件で我が社の売上が◯◯億減った」と言う本国の上層部を見て、「何のために会社の売上を上げるんだろう」「ただただ数字を追い求めた結果、何が残るのだろう?」と考えさせられました。
何のために働くのか?
何のために数字を追い求めるのか?
自分が社会全体を動かせなくとも、少なくとも理不尽なことを減らすために自分にできることは何か?
映画を鑑賞し終わってからずっと考えています。
売上や利益だけを追い求めると人は簡単に倫理を踏み越える。
売上や利益を上げるのは何か目的があったからなのに、いつの間にか、売上や利益を上げることが目的となり、そのために人が動かされる。
まさにお金を使うではなく、お金に使われる状態だなと。
この映画、単なるエンタメとして消費するのはもったいないです。
私は働く人、特に会社を経営する人、管理職として人の上に立つ人にはぜひ見てほしいと思う。
そして「何のために?」を考えるきっかけの1つにしてもらえたらいいなと思う。
2回目の見たい気持ちはありつつ、あまりにも問いが重すぎて、2回目を観に行く踏ん切りがつきません。
ラストマイル公式サイト